硝子体出血は硝子体内に出血をすることを言います。原因は以下のものがあります。
A:網膜静脈(分枝)閉塞症:網膜血管が何かの理由で詰まり血管が破れ出血。
B:加齢性黄斑変性:年齢的変化で中心部の黄斑部からの出血。
C:糖尿病網膜症:糖尿病によるもの。
D:裂孔原性硝子体出血:裂孔形成時に血管が破れ出血。
E:網膜血管腫:網膜血管腫からの出血。
F:網膜血管炎:網膜血管の炎症からの出血
E:他
出血があるために眼底が見えず網膜剥離が起こっているかどうかの判別は難しいですが、超音波検査という眼球内を影でみる検査にてある程度検討がつきます。
しかし浅い網膜剥離などは、わからないことがあります。そのため手術で出血をとることで始めて網膜剥離の有無や出血の原因がわかります。
≪上記の原因疾患に処置と予後≫
A.網膜静脈(分枝)閉塞症:
網膜血管が何かの理由で詰まり血管が破れて出血しているため、手術中は閉塞した血管をつぶすために光凝固(レーザー)を施行します。閉塞した血管からは血液成分が漏出しているため、その漏出した部分の網膜機能は低下します。そして、中心部(黄斑部)に漏出すると視力低下が免れず、手術しても視力改善は難しくなります。
B.加齢性黄斑変性:
年齢的変化で黄斑部付近の下から血管が出現し出血するものなので、手術しても視力改善は難しくなります。出血してから時間が経っていなければ網膜を切開し、網膜下の出血を除去することも可能です。網膜を切開することによって増殖性変化(怪我するとかさぶたが出来るように)が出現し網膜剥離が起こったり、黄斑部の真下に出血原因の血管があるため出血を除去しても視力改善は不良です。しかし、視野はある程度広がります。
C:糖尿病網膜症:
糖尿病によるものです。網膜症の程度によって視力予後は変わります。
D:裂孔原性硝子体出血:
裂孔形成時に血管が破れて出血するもので、網膜剥離を伴います。出血を除去し、原因裂孔をレーザーで閉鎖します。黄斑部網膜が剥がれてなければかなりの視力回復が期待できます。
E:網膜血管腫:
網膜の血管腫からの出血なので、出血除去後に血管腫をレーザーでつぶします。血管腫は多数存在することも、術後新たに出現する場合もあります。そのためレーザーでつぶしても再出血の可能性はあります。黄斑部網膜の障害がなければかなりの視力回復が期待できます。
F:網膜血管炎:
網膜の血管の炎症で血管が破れ出血するため、出血除去後は血管炎部をレーザーで焼きます。血管炎の原因は、全身疾患からの事もあり採血などでもわかる場合がありますが、不明なことが多く再発もみられます。黄斑部網膜の障害がなければかなりの視力回復が期待できます。
どんな原因であれ、血流の悪い疾患の場合、病態が進行すると、その血流の悪い血管から栄養を得ている網膜の部分が栄養不足となります。人間の身体は栄養不足になれば、それを補おうとする反応が起こりますが、この場合は新しく血管を作ることでダメージを受けている網膜の部分の栄養を得ようとします。それを新しく生まれた血管という意味で新生血管と言います。
この新生血管は、一見いいように見えますが、網膜は、細胞が密で血管が新たに侵入するスペースがないため硝子体へ新生血管は伸びていくため、硝子体剥離が起こった際、新生血管が引っ張られ破れる為に出血が起こります。怪我するとかさぶたができるように新生血管の周囲にもかさぶたができます。そのかさぶたは皮膚を引っ張るように、網膜を引っ張り、網膜剥離を起こします眼内では増殖していく組織ということで増殖組織と言います。
新生血管が眼内全体に起こると、いずれ隅角にも出現します。そして隅角でも同様に増殖組織ができ隅角を閉鎖します。そうなると水が出られず眼圧が上昇し緑内障になります。これを新生血管によるものなので血管新生緑内障と言います。ここに至ると失明に近づいてきます。
総論:
周辺部の残った硝子体に赤血球が絡まって残存し、術後溶けだして硝子体が混濁することがあります。少しなら自然吸収しますが、吸収不良時は洗浄する必要があります。
その溶けだした赤血球が水の出口の隅角に目詰まりを起こした場合には緑内障を起こすことがあります。
その場合はまず点滴で隅角洗浄しますが、効果不良なら手術的に眼内を洗浄します。1回目の手術で水晶体を残した場合でも、術後に周辺部処理が必要となれば水晶体を切除します。
しかし、数回手術しても光を失う場合もあります。
術後数週間から1年までは再増殖の可能性があります。また視力は網膜の障害が強い場合には回復しませんが、網膜復位後に血流改善があるため術後1年ぐらいで視力上昇する場合もあります。(「目の解剖について」、「硝子体手術について」を参照)
中川眼科医院 一般眼科・網膜硝子体専門(糖尿病網膜症など)
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