網膜に何かの理由で穴が形成されると網膜剥離が起こります(網膜が自然に薄くなり萎縮することで穴が開いたり、硝子体剥離が起こる時に網膜が強く引っ張られ裂孔が生じる)。網膜剥離が起こると身体はそれを治そうとする働きをします。怪我するとかさぶたができるように眼内にもかさぶたができます。そのかさぶたは皮膚を引っ張るように、網膜をさらに引っ張ります。そのかさぶたを眼内では増殖していく組織ということで増殖組織と言います。網膜剥離の時間が長ければ長いほど増殖組織は多くなります。なぜなら、網膜の下に水が入りスペースができるため増殖組織が網膜の表面に広がるだけでなく網膜の下まで出現するからです。手術を施行したとしても増殖組織を誘発する因子が術後も出る為、手術が数回に渡る場合もあります。それゆえ、少なくとも術後1年は注意が必要です。1回目の手術で水晶体を残した場合でも、術後に周辺部処理が必要となれば水晶体を切除します。しかし、数回手術しても光を失う場合もあります。特にそのようなことが起こり易い状態としては、年齢が若く網膜剥離期間が長い場合です。なぜなら、若年者ほど傷の治りが早いのと同様に眼内も増殖性変化が強く、網膜剥離が長いとその因子の量が増え、活動性が高くなるからです。また硝子体切除後に変化が起きた場合は、硝子体という内容物がなくなったため切除前に比べ病状の進行がかなり早くなります。その為、術後に変化が生じた場合は緊急な対応が必要になります。網膜を押さえるために通常はガスを注入します。そのガスは約2週間で自然吸収されます。吸収され少なくなったガスは上方へいくため下方の圧迫が不十分になります。術後にガスの追加をすればさらに長く圧迫できますが限りがあります。その為、長期圧迫を必要とする場合や増殖性変化を抑えたい時などはシリコンオイルを使用します。しかし、シリコンオイルはガスと違い自然吸収がないため抜去する手術が必要になります。シリコンオイルは、増殖因子をある程度抑えることができますが、同様に正常細胞までダメージを与えてしまう為、注入するかどうかや抜去時期を考えなければいけません。また長期注入するとシリコンバブルが隅角につまり緑内障を起こしたり、角膜に接すると角膜の循環が悪くなり角膜混濁を来します。
(「目の解剖について」、「硝子体手術について」を参照)
視力は、網膜復位後に血流改善があるため術後1年ぐらいで視力上昇する場合もありますが、網膜の障害が強い場合には回復は望めません。
中川眼科医院 一般眼科・網膜硝子体専門(糖尿病網膜症など)
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