全身あるいは局所麻酔にて仰臥位(上向き)で、角膜の端から3~4mmの所に約1mm弱の穴を3箇所開け、光とカッターを挿入します。残りの1つは、カッターで切除吸引すると眼がしぼんでしまうため吸引した量と同量の水が入るように環流液を挿入します。器具挿入後は、角膜、瞳孔を通して顕微鏡を見ながらの手術となります(図3、4)。
自然な硝子体剥離が起こっていない場合は、手術中に人工的に剥がします(剥がさなければ術後に硝子体が収縮を起こし網膜剥離を起こすからです)。人工的、あるいは自然に剥がれた場合でも、「目の解剖について」で述べた様に硝子体繊維は多少網膜表面に残っております。その残存繊維は通常問題ありませんが、術後数週間から1年の間にその残存硝子体繊維が膜を作ることもあります。その膜は収縮し、網膜剥離を起こすために剥がす手術が必要となります。
また周辺部では、硝子体繊維と網膜は強く癒着しているために必ず硝子体が残ります。硝子体手術後は必ず残った硝子体(周辺部の残存硝子体や網膜表面の残存繊維)が収縮を起こしますが通常は問題ではありません(図2、5)(図2については「目の解剖について」を参照)。しかし、病気によっては、増殖性変化を起こしたり(眼内の病変の活動性が高いことを意味します)網膜が弱い場合は裂孔を形成し網膜剥離を起こしたりすることがあるため、しっかりと処理する必要がある場合があります。その場合は、白内障で見えにくいことや水晶体自体が邪魔となり処理ができない為、同時に白内障の手術も施行します(図6)。この場合、一般的に白内障手術時に挿入する人工レンズは挿入しません。人工レンズを挿入すると異物反応が強く生じ予後不良となるためです。眼内の病変の活動性が低い場合は人工レンズを挿入することもありますが、挿入後に異物反応が強く出たり、周辺部の眼内変化が強く起これば2回目の手術で抜去します。
元々眼内レンズが挿入されている場合は、なるべく抜去せず手術施行しますが、後発白内障(白内障術後の人工レンズを入れるために残した袋が濁る事)が強い為に眼底処理ができない場合や術後の炎症が強く予想される時は抜去します。眼内の活動性が低く白内障も強くない場合は水晶体を温存します。しかし、その場合でも周辺部に上記のような変化が起きた場合は、2回目の手術を施行し、白内障手術も併用します。網膜剥離がある場合は、原因裂孔に光凝固を施行し裂孔を閉鎖します。光凝固が固まるまでの約2週間、網膜を押さえ込むためにガスを注入します。ガスは軽いため上方に上がるので、網膜を押さえるためには腹臥位(下向き)が不可欠となり、ガスが自然吸収されるまでの2~3週間は体位制限を必要とします(図7)。仰臥位(上向き)だと眼球の前方を圧迫し隅角(「目の解剖について」を参照)を閉鎖し眼圧上昇、角膜循環不全による角膜混濁などをきたすからです。水晶体を温存した場合も、水晶体の循環不全を招き白内障が進行するので、腹臥位が重要になります。(図8)術後ガス吸収が早い場合や長期に網膜を押さえたい場合には、ガスを追加することもあります。
さらに長期に網膜を押さえたい場合にはシリコンオイルを注入することもありますが、シリコンオイルは自然吸収されないので抜去の手術が必要となります。
人工的であっても周辺部だけでなく赤道部(眼球の真ん中付近)も硝子体の癒着が強く剥離できない場合もあります(病変の活動性が高い場合は、血管炎が強く硝子体との癒着が強くなるためなど)。この場合は残存硝子体が赤道部で収縮を起こし、弧と弦(図9)のように網膜を引っ張り網膜剥離を起こすので、その可能性の高い場合は、赤道部の眼球周囲にベルトを巻きます(強膜輪状締結術)。巻くと眼球がひょうたんの形になり弧と弦の関係が緩和されます。そのため多少の硝子体の収縮では網膜剥離は起きません(図10)。
基本的には視力を上昇させる手術ではありません。しかし、白内障併用時や硝子体混濁合併時には、光の通路の濁りが除去されるので、その分の視力は上昇します。網膜剥離があった場合は、その剥離部分の網膜は栄養不足であり細胞がダメージを受けている状態なので、網膜が復位(正常な位置に戻る事)すれば血流が改善し徐々に視力回復も期待できます。ただし、視力回復するまでに1年ほどかかる場合もあります。また、術後1年は再増殖などの可能性もあるため注意が必要です。
一度でも硝子体手術を施行すると眼内に硝子体がほとんどなくなる為、眼内変化が起こった場合には進行が早く至急手術が必要となります。
硝子体手術は、眼内手術のため眼内炎を起こすことや、数回手術施行しても再増殖が続き光を失うこともあります。
水晶体切除を施行し眼内レンズ挿入をしなかった場合は、術後にコンタクトレンズとメガネが必要になります。しかし、コンタクトレンズやメガネを使用したとしても、網膜の機能が低下していれば視力は出ません。水晶体を残して手術施行した場合でも白内障進行が片眼より早く、進行した場合は白内障手術となります。
術後炎症沈静化させるためや出血除去、ガス追加のために点眼麻酔にて眼内注射し洗浄することがあります。
中川眼科医院 一般眼科・網膜硝子体専門(糖尿病網膜症など)
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